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誰かを元気づけたい時は、まず、その人の生活のなかでうまくいっていることを具体的に訊ねてから、全般的な幸せに関する質問を持ち出すようにしましょう。

シンプルな方法に聞こえるかもしれませんが、ノーベル経済学賞を受賞した心理学者のダニエル・カーネマン氏によると、「不思議なくらい効果がある」ということです。

カーネマン氏の研究では、学生に対して次の2つの質問をしています。


先月、何回デートしましたか?

近頃、どのくらい幸せですか?


研究では、最初の質問に気分良く答えられた人は、2つ目の質問にも気分良く回答していることがわかっています。もちろん、1つ目の質問は、上の例とまったく同じでなくても構いません。答えが「相手の気持ちを前向きにさせる」と思う質問を選んでみましょう。

ただし、質問の順番を逆にしてしまうと効果はありません。これは、カーネマン氏の理論によると、「幸せ」とは単純でなく、即座に判断できるものではないため、前の質問で生まれた気分が2つ目の質問にも引き継がれることが理由とされています。



デートの質問で呼び起こされた感情は、一般的な幸せに関する質問をされた時もまだ残っています。「最近の幸福度」という問いは、自然に判断できるものでも簡単に答えが出るものでもなく、きちんとした回答を出すにはそれなりの時間が必要になります。しかし、デートの回数について聞かれた学生たちは、すでに「現在の恋愛に対する幸福度」という具体的な質問への答えが心の中で出ているため、それほど深く考える必要はないのです。

同じパターンは、親との関係や、金銭面に関する質問の直後に全般的な幸せについて訊ねたケースでも見られました。いずれのケースでも、特定の分野における満足度が、全般的な幸福度を左右していました。受け手の気分を変えるような、感情的な影響の大きい質問はなんであれ、同様な効果をもつのです。


エリック・バーカー氏は、この研究を雑誌『The Week』の記事で詳しく紹介し、この2段階の質問テクニックをうまく活用すれば、相手に自分を好きになってもらうことができると説明しています。つまり、相手が質問内容について良い感情を持てば、その感情を質問者に対しても向けてくれるというわけです。